眠りから目を覚ましたら、戦国時代の武田晴信の次男、武田信親の体の中にいた。
何でこんな事になったのか?目を開く事も出来ないのにどうやって生きて行けと言う?
そもそも、このまま時間が経過したら確実に織田信長の甲斐侵攻時に殺される。
不幸中の幸いと言うべきか、自分には趣味で覚えた多少の知識がある。
これを『夢で菅公から学んだ』事にして、何とか生き延びよう。
これは後に『今荀彧』と呼ばれる事になる、男の物語。
現在152話で毎週土曜日に投稿されている現行長編作品。
安易なチートは描写されない戦争・内政・外交有りな本格派の戦国小説です。
武田信玄の二人目の息子に現代日本から憑依した主人公。
突然の入れ替わりが周囲にバレてしまうと妖として殺されてしまうことは不可避で、
しかもその身体は先天的に目が開けない盲目で、この戦国時代に戦場で活躍することも不可能。
この問題を解決すべく夢枕で学問の神・菅原道真を師とし加護を得たという嘘をでっち上げる。
普通の子どもが知る筈のない未来知識を慎重に披露していくことで、
天神様の庇護を受けたと勘違いさせることに成功し後の軍師としての基盤を固めていきます。
第一章の甲斐国編では戦国時代にこの地に生まれた最大の問題の、
生まれた赤子を間引かざるを得ない困窮という地獄に立ち向かっていくのがメインテーマ。
水害多発し干ばつは起きるし、冷害も起きやすく不作凶作は当たり前。
それに加えて明治になって原因が判明した風土病――日本住血吸虫の存在。
wikiの名文と名高い日本住血吸虫症ですが、小説でこの病に対処するのは初めて見ました。
釜無川の流域をコンクリートで全て埋め尽くすことにより血吸虫に対処し、
獲得した十反の小さな領地にサツマイモ等の植生を実験し食糧問題を解決して、
孤児に幼いうちから読み書き計算と武術を教育し一門衆を構築することで地獄をぶっ壊します。
そして駿河侵攻の為に足掛け三年の下準備をかけた主人公の策略が炸裂して悲願の海を獲得。
第二章では基盤を固めた甲斐国から遠江国へ舞台を移し一地域から日本全体に進出していく。
本作は、木下藤吉郎の登用を始めとする人材の青田買いや種子島の鉄砲鍛冶の育成、
硝石の作成と産業支援から常備兵を増やす等内政ものの勘所をしっかり抑えているのが良い。
筋道を立てて成り上がっていくので、突っ込み所もなく話に没入出来ます。
また作中の補足資料にも表れていますが、
作者の戦国時代への造詣も深く本格的戦国小説となっているのも良い所。
作中も現代の静岡等の記載はなく旧国名の表記で統一されていますが、
遠江国が果たしてどこなのか分からない自分でも地図を見ながら本作を読み進めてます。
なろうには本当に幅広い作品がありますね。
最新話付近では加賀守となり京の周辺さえも抑えた主人公が、
軍神たる上杉謙信殺しの罠を仕掛けこの策略が成就するのか続きが非常に楽しみです。
王佐の才荀彧の再来に正に相応しい主人公の道を是非ご覧ください。
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紹介記事を投稿しました。
— 夜市よい (@yoichi_041) January 31, 2023
作者の戦国時代への深い造詣と
地獄を救うためなら修羅になることも辞さない
魅力的な主人公の成り上がりが描かれる本格派戦国小説です。
戦国の悲劇とともに成長する盲目主人公の本格派戦国小説
「盲目の軍師~武田信親伝~」 https://t.co/e7aJXrBrKm#narouN1975GY
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