父の死により地方の造園会社を引き継いだ男は、お飾り社長の無力感に心底嫌気がさして自死を選んだ。
そんな彼が何の因果か異世界に転生し、またお飾り社長(国王)をやるはめに。収支は真っ赤、国内は階級闘争寸前、周囲は敵国ばかり。独身の彼を取り巻く見目麗しの令嬢たちだけが彼の癒やし…のはずもなく。
使える現代知識なし、じんわり近づく革命の気配と始終暗闘ギスギス私生活を乗り切るべく、彼は今日も玉座で物言わぬ置物になる。
現在95話59万字のオリジナル現行連載長編作品。
気が付けば異世界の破綻寸前国家の王となっていた主人公が自分が生き残る為に、
歴史書に若き悲劇の王と記されるような英雄ではなく暗君として妥協しながら理想を模索する。
果てしない利害調整の困難さと上に立つ者の孤独さが良く分かる大作です。
実家の造園会社を継いで社長となり優秀な部下が全部やってくれる環境におかれた結果、
自分の価値のなさに絶望して自殺した主人公は気づけば異世界国家の国王となっていた。
そして自分が転生した国王は常識と経験が無いままに賭博的政策を志していた超過激派で、
破綻寸前の国家財政に置かれている環境下で既に部下達には見切りをつけられてしまっている。
その謝罪行脚から転生した主人公の苦難は始まっていきますが、
このままでは赤字財政によって崩壊してしまう為に国家の構造自体を変えなければならない。
その為に主人公が志した初手は軍事費の圧縮で当然反発する勢力を離反なく治める為に
国王にとっての最後の武器たる近衛軍の廃止を始め国王自身が身を切る改革を進めていく。
その姿を見て心の内では侮蔑していた閣僚を始め貴族令嬢達が心変わりしていくその過程と、
何者も信じられない主人公が彼女らを信じるに至った第一部が魅力的に描かれていきます。
本作は異世界でもどこまでも現実的でシビアに国家運営が描かれているのが特徴的で、
王を前に何一つ本心を語ってくれない部下の背景から真意を想像して委任する。
現代から転生しても何も出来ない無能さを自覚する主人公が自らの権力を手放し妥協していく
しんどすぎる孤独な王様の悲哀が味わえる作品となっています。
その主人公の国王としてのセリフの一つ一つが格好良いのも惚れ惚れさせるところで、
主人公の不安ばかりな内心と外面との良いギャップを見せてくれる。
「では、空になったの誇りの箱に、我が国の”本当の誇り”を入れよう」
23話
そして主人公の婚約者候補となる貴族令嬢達もみんな可愛くて、
最初は完全な政治的事情による嫌々な関係から氷解していく様子が解像度高く描かれ良かった。
推しはあの王宮への出仕を始めとして数々の覚悟を見せてきたブラウネちゃんです。
そんな国内をまとめるだけでも過酷な道すぎた第一部が終わって、
周囲の視点から王を描く第二部で描かれる王の姿も面白いので是非一読してみて下さい。
コメント
挫折した主人公だから自分の行動に熱量があるわけじゃ無いんだけど、周りがその影響受けて、それが積み重なってどんどん作品のエネルギーが燃え上がっていくのが好き
ただやっぱ一筋縄じゃいかないのが読んでてハラハラしますね
コメありです!
その全く一筋縄ではいかないことばかりな中でも、
主人公が足掻いた結果が確かに第二部で受け継がれているのを見てしみじみさせてくれました…