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原作主人公と泥臭く駆け抜ける百花繚乱の傑作戦記「三国志外史  ~恋姫†無双~」

◇第1部

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◇第2部

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 後漢王朝の崩壊に始まる群雄割拠の戦乱の世。やがて、それらは3つの勢力に統合される。
 正義を掲げた、劉玄徳の興した蜀漢。
 覇道を歩みし、曹孟徳が築きし魏。
 調和を重んじた、孫仲謀の建てた呉。
 三国が覇を競い、中華の大地を鮮やかに彩った時代を、知らぬ者などいないだろう。
 それ、すなわち三国時代。
 後の世に、永く語られることになる猛々しき争覇の時代にして。
 幾多の乙女たちが、その心命を賭して駆け抜けた、繚乱の時代である。

今や反逆のソウルイーターで書籍化作家となられた玉兎さんによる、
原作を知らない方でも問題ない恋姫2次創作を語る上では決して外すことの出来ない傑作です。
天の御使いとは祀り上げられず奴隷の始まりから劉家の驍将と呼ばれるまでに成り上がった、
原作主人公北郷一刀の格好いい姿が終始描かれるこの熱い作品を是非ご覧ください。

第1部100万字完結・第2部100万字にてエターとなってしまいましたが、
時系列では官渡の戦いまでは終わっています。

突然異世界に放り出されては黄巾党の人狩りに遭い強制労働に従事する主人公北郷一刀は、
毎日朝から休みなく働かされてこのままでは遠からず死ぬ運命だったところ
黄巾党の幹部でみんなのアイドルな張家三姉妹のライブも無視して労働に勤しんでいた。
そのステージに全く見向きもしなかった所に目を付けたのが敏腕マネージャーの張梁で、
ライブ後日に下心満載な連中には頼めなかった姉妹の召使いになることを頼まれる。

奴隷労働よりはアイドルのマネージャー業の方がよっぽどマシと雑用の仕事を引き受けて、
関係各所をかけずりまわる日々の中で3姉妹からの信頼を獲得。

その日々の中旅の途中で黄巾党に捕まり暴行を受けていた諸葛亮と鳳統を命懸けで助けると、
彼女たちを逃がすために黄巾党根拠地からの撤退戦を出会った劉備達と潜り抜けることに。
黄巾党には居られなくなってそのまま劉家軍に加入した一刀は、
300名の劉家軍を取りまとめるマネージャーとして機転を働かせつつ活動していく中で、
反董卓連合に始まる皇帝崩御による大乱に巻き起こまれる。
果たして特殊な立場も能力も持っていない一刀は生き残ることが出来るのか。
アイドルをしていただけなのに黄巾の乱の首謀者となった張角たちはどうなるのか。
先ずは突如異世界に送り込まれた一刀がこの世界に馴染んでいく様が描かれていきます。

そしてこれまで日本に帰るまでは絶対に死にたくなかった為に戦には決して参加せず、
自分は偉人を支える無名の人物に過ぎないのだと地道な下働きに従事していた序盤から
本作が一気に飛躍するのが遂に自らが死地に飛び込むことを決意した第10章で、
ここから第1部のラストスパートと言わんばかりに熱く滾る怒涛の展開が開幕します。

「事破れた上は、その薄汚い命で償えッ! 殺してやるぞ、貴様らァッ!!」
 大喝と共に、北郷一刀は、ただ一人残った賊将、雷薄に向かって、斬りかかって行ったのである。

本作は異世界に突如転移してしまったただの一般人に過ぎなかった、
原作主人公北郷一刀の成長と成り上がりっぷりが兎に角魅力的に描かれている作品で、

第一部だけでも主君劉備を逃がすために関羽も張飛も趙雲さえいない中で、
呂布・高順の最精鋭の軍勢十万に対し五百の兵を率いて決死の防衛戦を繰り広げるに至る。
作中序盤からずっと出て行けば死ぬとわかっている場所には出たくはなかったのだと、
その心情を吐露していた一刀に一体何があったのか。
ただの一般人から英傑に一変を遂げた一刀に対して納得出来る熱い描写が素晴らしいです。

勿論一刀以外のオリキャラを含めた原作キャラクターも輝いていて、
軍師の業に劉備の大徳に武人の生き様と各キャラクターの魅力が本当に引き出されています。
特に第2部で描かれたバラバラに散らばっても尚以心伝心な劉備軍の信頼と連帯、
更に絶望的な環境下に置かれても尚奮闘したオリキャラの司馬一族達がとても印象的。

そして戦争描写もしっかり迫力満点の戦乱模様が繰り広げられて、
第1部では13章での一刀が正しく英傑と呼ぶに相応しい偉業を成した高家堰砦の死闘と、
第2部では各陣営の思惑が入り混じる混戦となった6章洛陽宮殿での戦いがお気に入りです。

そんな盛り上がるストーリーと魅力溢れるキャラクターに加えて熱くなれる戦争描写が
揃っている傑作なのでエターが気にならない方は是非一読してみて下さい。
自分は最終話に辿り着いた後直ぐに同作者別作品の聖将記を読むことで
悲しみを先延ばしにする技を習得しました。

自分用ここすき名場面リスト格納(完全ネタバレあり)

――かくして、再会の時は来る。

「今更ながらではありますが――お祝いを申し上げます」
「お、お祝いって??」
 おれの突然の言葉に、玄徳様は目をぱちくりさせる。
「はい。玄徳様は、諸侯が万金を投じても……いえ、そんな例えでは追いつきませんね。彼らが、領土の半分を差し出したところで、得ることが出来ない不世出の人物を、その麾下に置くことが出来た。そのお祝いを、申し上げます」
 そう言って、おれはその人物――鳳凰の雛たる、少女に視線を向けた。

 全滅か勝利か、2つに1つ。使わずにすめば、それに越したことはない。けれど、今のおれたちの状況では、使わずに済むという選択肢が見当たらない。だからこそ、鳳統はその危険性を十分に理解した上で、この作戦を立案したのだろう。
 自らを、渡河部隊に組み入れて。

「士元、どうして前線に出ようとした? おれが今言った程度のこと、士元が気づいていないわけはないだろう?」

劉備軍軍師 鳳統が心血を注いで築き上げた戦略図は、ここに全き完成を見る。

 そう言うと。
 趙雲は、玄徳様の前で。
 静かに、片膝をつき、頭を垂れた。
「劉家軍が主 劉玄徳殿に請う。我が槍、貴殿のために振るうことを、お許し願いたい」

「私が選ぶのは、私たち三人を幸せにしてくれて、それでもって、こんな悲しい時代を終わらせてくれる人。こんな条件を満たす人って、なかなかいないんだよね~♪」
 その台詞を言い終える頃には、張角はまたいつものほにゃっとした笑いを浮かべていた。

 戦うべき時は今だとわかっているのに。
 玄徳様が望む未来。誰もが笑って暮らせる世の中をつくるために、今、戦うべきだとわかっているのに。何も、剣をもって突撃するだけが戦いではない。たとえば、大声をあげて注意を逸らせば、立派にかく乱になる。
 だが、おれは、そんなことさえ出来ないでいた。
 いや、言葉を飾らずに言おう。
 出て行けば死ぬとわかっている場所に。
 関われば殺されるとわかっている場所に。
 おれは、出たくなんかなかったのだ。

「申し上げますッ! 街道より、劉の旗を掲げた一団が接近しておりますッ!!」
「――小沛城主、劉玄徳が麾下、北郷一刀」

「もしかして――あの襲撃の日から、ずっとそうなのかな?」
「一刀さんは、多分、まだしばらくは、食欲もなくなるし、眠るのも難しいままだと思う。でも、そんな時でも、今みたいに無理やりにでも、これまでどおり、きちんと食べて、きちんと眠ること。少なくとも、そうするように努めること。身体をこれまでどおりに保っていれば、いずれ心の方も落ち着いてくる筈だから」 
私もそうだったしね、と玄徳様は小さく呟くが、すでに意識を手放しかけていたおれは、その言葉を聞くことが出来なかった。

「人は天の繰り人形じゃない。天が人の動きを決めようとするなら刃向かってみせる。でも人の想いが天を動かしたのなら、それに逆らうことは誰にも出来ない。この戦いは、きっとそういう類のものなんだ」

「運否天賦……とうとう、天をすら動かしましたか、北郷一刀」

その北郷の姿を遠目に見た司馬懿は、小さく呟いた。
「……劉家の驍将」
飛将軍を退け、十万ともいわれる仲軍の猛攻から高家堰砦を守り抜き、ひいては広陵一帯を仲の支配から解きはなった、稀有の才。
「ようやく」
 ――その片鱗を、垣間見た。そう思う。

「買いかぶりなんかじゃありません。もちろん、司馬家のためだけに戦っていらっしゃるわけではないでしょう。でも、私たちのことを思ってくださっているのも確かなはずです。だって、そうでなければ、どうして私の前ではいつもおどけていらっしゃるのですか? 張太守様と一緒になってまで、まるで……」 
まるで私が少しでも楽になれるよう気遣うように。

『おお、やっと会えた。久しいな、妹たちよ』 
暗く沈む室内に不釣合いな、いっそ朗らかといえるような声と共に姿を現した北郷を見て、司馬孚はぽかんと口を開けてしまった。驚いたとか嬉しかったとか、そういうこと以前にわけがわからなかった。

そんな関羽の内心の混乱を知ってか知らずか、曹操はあっさりとこう口にした。
「北郷一刀。あの者を虎牢を守る主将に据える。この人事について、あなたの意見を聞かせてもらいたいのよ」

「――まさかと思うけど、方士の言葉で母さんのことに責任を感じた挙句、俺を恨んでいないかとか訊いたりしないよね?」

「母さんと別れたあの日、あなたが握ってくれた手の暖かさをわたしは今も覚えてる。きっと、死ぬときまで忘れない。一生かけてもこの恩を返そうって、あの時に決めたんだ。だから、この戦いが終わった後も、わたしは一刀についていくよ」

司馬懿は特に気負うでもなく、静かに言った。
「私は、あなたに殉じたいのです」

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