マスターデュエルで遊戯王に復帰した男が、遊戯王DMの世界に転生。
前世の知識や認識を生かしつつ、原作には関わらないようにするつもりが、全国大会に出場(二回戦落ち)したのを切っ掛けに、決闘者の王国へ招待されるところから始まるストーリー。本人はルールなどの違いから、アニメ世界線とは似て違うものだと判断したが、実は彼が転生した世界線がアニメとして放映されている世界もあるようで……?
別世界の掲示板で「チュートリアルの人」と呼ばれた決闘者の活躍を描くストーリー。
全21話26万字の原作遊戯王長編完結作品。
遊戯王DMの世界に転生した主人公が現代OCGのカードを武器に遊戯達と互角に渡り合う。
そして転生者らしく悩みつつ神のカードを始めとする世界の危機に抗った軌跡を追う大作です。
遊戯王世界に転生し現代OCGの有力テーマ「ドラグマ」「烙印」のカードを扱い
全国大会にも出場している主人公倉瀬カインはペガサスから決闘者の王国に招待されると、
カードが全てなこの世界で好成績を残し将来の就職を有利にする為にこの大会に出場を決めた。
そしてそんな20年未来のデッキを持ち王国編時点で現代遊戯王でも通用する主人公の前に
立ち塞がるのは原作主人公武藤遊戯で序盤からクライマックスなデュエルが開幕する。
無事にそのデュエルを終えてやり残したことは最早ないと大満足な主人公ですが、
闇バクラに暗殺されるペガサスを救ったことから予定に無い原作改変が始まっていって。
そのまま自分が何もしなければ遊戯達によるハッピーエンドが約束されているこの世界で、
自身の存在に悩みながらも最後には自分がラスボスとして君臨した主人公の結末は果たして。
そしてこの一部始終は原作の代わりにこの小説の世界をアニメとして楽しんだ掲示板の住人に
「遊戯王DMのチュートリアルお兄さんこと倉瀬カイン」として持ち上げられていて、
この主人公がどのようにこの世界の視聴者に受け止められたのか振り返っていきます。
遊戯王2次ではOCGのカードを持ち込んでカードパワーの暴力で無双する作品も好きですが、
本作はそのカードパワーで原作とはまた違う遊戯王の素晴らしさを伝えているのが素晴らしい。
決してライフポイントの削り合いだけではないこのゲームの奥深さを見せてくれます。
更に本作はOCGプレイヤーの鑑のような主人公が遊戯王世界に完全に溶け込んでいて、
その主人公と遊戯や海馬・ペガサスの主要原作キャラのみならずバンデット・キースすらも
名解説役として魅力的に配置されて作者の遊戯王に対する愛が伝わってきます。
そして遊戯王では欠かせないデュエル描写も非常に盛り上がるものになっていて、
無敵の神耐性を持ったラーの翼神竜に対して原作のように神には神で対抗するのではなく、
デュエルモンスターズ自体のルールによってこのラーの翼神竜を葬り去ったのは
原作と見間違える程に良く出来ている素晴らしいバトル構成でした。
「モンスターの効果ではない!デュエルモンスターズの……ルールだ!!!」
そんな転生主人公が現代デッキの強さを見せながら原作改変に苦悩しつつ、
遊戯王らしいカードの絆で戦っていく本格的な遊戯王作品なので是非一読してみて下さい。
PS.「やらない夫はプロのポケモントレーナーになるようです」のやる夫作者様でもありました。
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