その時、日本は変わらなかった。しかし世界は、決定的に変わってしまっていた。
令和X年3月9日23時40分頃。日本を大規模な通信障害が襲い、国外との一切の通信が遮断されてしまう。
誰もが戸惑う中、内閣総理大臣加藤忠彦は恐るべき連絡を受ける。300もの国籍不明機が、首都東京を目指して飛行中だというのだ。
即座に下される防衛出動命令。一切が謎のまま、熾烈な防空戦闘が始まった……。
全126話60万字のオリジナル長編完結作品。
令和の日本が第二次大戦東京大空襲の直前に突如タイムスリップ。
第二次大戦の世界に孤立した日本が迫りくる300機以上ものB-29の迎撃から始まった、
一変した世界での生き残りの道に奔走する苦難の政治と戦争の過程を描いた大作です。
単純に現代兵器で無双とはならない過酷な現実を描いていて、
リアリティのある本格的な仮想戦記を読みたい方に特にお勧め。
1945年3月に突然タイムスリップした令和日本に300機以上ものB-29が侵入してきた。
発覚から爆撃まで10分も無い中で防衛出動を命じられた自衛隊は必死の迎撃戦闘を実施するも、
防空網の間隙を突いて投下された焼夷弾によって2万人もの犠牲者が発生してしまって。
それでも先ずは莫大な石油資源が眠っているアメリカとの和平を目指しますが、
アメリカは日本にいた硫黄島侵攻部隊がタイムスリップにより一瞬で消失した現象を
当時の大日本帝国が禁止された化学兵器を使用したからと誤認識して激昂し
日本を地図上から消滅させると絶滅戦争を宣言し和平への道は完全に断たれていく。
あらゆる資源が欠乏し1年後に迫りくる連合軍には対抗出来ない運命が待っている為に
自衛ではなく総力戦体制に変貌しての反撃に移行せざるを得なかった日本国内に加えて、
時空災害時に日本にいた為にタイムスリップに巻き込まれた在日米軍は
令和の日本と嘗ての米国のどちらに協力するかの非常に苦しい選択を求められる。
更には時空災害時に海外領土にいた関東軍を始めとする日本軍は未だ健在で。
勿論突如として現代兵器による理解不能な攻撃を受けたアメリカ軍側の描写もあり、
この如実に描き出された各勢力の混乱の中で令和の日本の生存戦略を探っていきます。
本作はタイムスリップものらしい現代兵器が存分に活躍するのが楽しめる点に加えて、
突如叩き落された混沌の中でも奮闘する政治家に民間人の数多くの視点から
この世界に少しずつ適応していく過程が描き出されている日常が魅力的です。
販売先自体が消失した輸出産業を始め雇用率が半分以下となった統制経済下での
絶滅戦争となった中で憲法9条や在日米軍基地の課題に多数の視点から向き合っていく。
その雰囲気の変化が丁寧に描き出されています。
そしてそもそものタイムスリップについても単純な舞台装置で終わりとはせずに、
原因は何だったのか、更に再度起こってしまう可能性は存在するのか調査する日本と
各国も令和の日本が突然現れたとは到底信じられない中で多種多様な誤解が生まれつつ、
SF的な要素を交えつつしっかりとその謎が解明されて結末へと繋がるので満足感が高い。
この超常現象ならではの様々な混乱や誤解を楽しみつつ最後はしっかりと締めてくれました。
その混乱の他に印象に残ったのは現状の最新兵器群が消耗を考え使用不可の状態で
アメリカ軍の4000機もの波状攻撃を低コストでしのぎ切ったとある兵器で、
その発想は無かったと日本史上最も大規模な軍事作戦が展開される模様と共に展開される。
そんな現代兵器無双とタイムスリップ特有の混乱っぷりが面白いので是非一読してみて下さい。
コメント
作中で出た、4000機の戦闘機に対抗した兵器は現実にも似たようなものが存在してて、1998年に国際的に使用・譲渡禁止になってるそうな
ゴルゴにもそれを扱った回があったし、割と伝統(?)ある兵器みたい
でもあの場で思いつくのは頭柔らかいと思う
ペ〇パー君が宇宙的恐怖になってたのは草だった
確かに知らない人が見たら不気味かも
コメありです!自分もググってみて今は使用禁止になっていて安心しつつ、感想欄での正解者も多く凄いなと思ってました。
そして銃撃されても構わず動き続けるペ〇パー君のホラーも良いアクセント効いてましたね
令和日本が徹底した情報戦をやっていたせいで、トルーマンがとことん哀れな道化になっていたのが印象深い。
まあ作者の別作品でもトルーマンは酷い目に遭うんですけどね。
コメありです!
宇宙人とタイムスリップなら宇宙人を取るのは分かってしまうだけに、
馬鹿にはできず同情すらしてしまいます。