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Arcadia

“軽くあれ”それは空を飛ぶために全てを捨てた少女のたった一つの行動理念「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド(魔導師たちの群像)」

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飛ぶことしか知らなかった少女と、ヴィータの物語。

リリなの原作全35話24万文字完結の理想郷で今年最後に紹介しようと温めていた隠れ名作。
人気の出やすい熱く燃え滾る展開やリリなのキャラとの恋愛等はありませんが、
美しいという言葉が先ず最初に出るような本当に綺麗な物語です。
オリジナルであれば単発作品のライトノベルとして販売されていても納得する完成度。

StS後の機動六課が解散しキャラクター達はそれぞれ別の道を歩んだ世界で、
空を飛ぶことしかできない1人の偵察兵の少女がヴィータと共に成長する過程が描かれます。

時空管理局陸上本部航空12部隊バードランド分隊に配属された主人公市蔵ソラの初仕事は、
魔導士限界高度の遥か上、上空8000メートルから偵察を行い地上の敵の数を報告すること。
その日は犯罪者のアジトに強襲を仕掛けた隊長シグナムと副隊長ヴィータに向けて、
対物ライフルによるキロメートル級の狙撃が放たれたことに気づき警告を放つも彼女達は負傷。
そして入院中のヴィータへ着任の挨拶に向かったことから2人の長い関係が始まっていって。
「飛ぶ以外は何もない」と語り限界を超えて飛ぶ為に全てを捨てて軽くなった主人公と、
その小さな体に周囲全ての想いを背負って戦うヴィータ。

第1章はこのどこか似ているようで決定的に異なる2人の出会いから
主人公が両足を無くし所属部隊が壊滅した過去を深堀りする中で相棒となる様子が描かれ、
第2章では高町なのはを始めとする原作オールスターで世界崩壊の危機に立ち向かいます。

本作は巧みな比喩等の表現技法を駆使した文章力が特徴的で、
決して流し読みなんて出来ない一文一文を味わって読ませるだけの魅力があります。

思わず声に出して読みたくなる以下のようなフレーズの数々が実に美しい。

燃えた粉塵漂う、重たい雲を突き破る。体を縛る重力の鎖を、空気摩擦の破裂音で引きちぎり、群青色の天空へと羽ばたいていく。視界の端に朝日が燃える。地平の彼方が丸みを帯びて、高高度に来たことを歓迎する。雲でさえ届かない澄んだ透明度の空気が、レンズのように透き通り、天体たちが騒がしい。

そしてストーリー自体も1つの事件を追っていく中で主人公の成長がしっかり感じられて、
「”軽くあれ”。私には”飛ぶ”以外は何もありませんから。」と語り、
宮沢賢治のよだかの星になぞらえて成層圏の彼方を目指し飛び続けるしかなかった主人公。
それがヴィータを始めとする魅力的な原作キャラクターと関わることによって、
「愛しい重みを守るために飛ぶ」と人の悲しみや温かみを知り変わっていく過程が素敵でした。

原作キャラだと本作のニヒルなザフィーラがお気に入り。
そんな文章もストーリーも美しいという形容詞が似合う作品なので是非一読してみて下さい。

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