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Arcadia

世界全てが敵となった凡人のこんな筈じゃなかった物語「外史につくろう穢土幕府」

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だが、一刀は死にたくなかった。
こんなわけのわからない異郷に一人で放り出された挙句に、
両親や友人の顔を一目見ることすら出来ずに異国の土に返るなど、冗談ではない。

そして、その手に何も手段がないのであればさておき、
生き残る為の方策もきちんとこの世界には用意されていたのに、諦める事は難しかった。

だったら、それを使って生き残るしかない。
例え罪に浸かることになろうとも。
日本に帰る資格を失う事になろうとも。
平凡な一市民としての生活にピリオドを打つことになろうとも。
他者を踏みにじることになろうとも。

一刀は、死にたくなかったのだ。

原作恋姫無双の全50話長編完結作品。
別の外史よりほんの少しだけ賢くて、ほんの少しだけ巡り合わせが違っただけの北郷一刀が、
ダークで外道な覇道を貫いていった生き様を辿るシリアスな三国志です。

原作同様に荒野のど真ん中に落とされた主人公一刀。
しかし原作と異なり誰も助けにきてくれない中襲い掛かる匪賊から手に入れたのは
他人を操る方法が記載された妖術書、太平要術の書で。

たった一人で別世界に放り出されては生きていけない一刀は当然太平要術の書を頼るしかなく
他人を洗脳して生きる糧を得る毎日に現代日本人だった心は徐々に摩耗し、
古代中国にて匪賊集団からマフィアのボスにまで君臨することに。
そして偶然にも鳳統を下すという成功体験から、
英雄たる美少女たちを我が物にするため天下を取るという我欲の元に三国志に覇を唱えていく。

本作はたった一人の現代日本人に過ぎなかった北郷一刀が、
外道に染まり一気に匪賊から支配者へと成り上がっていく序盤の展開が先ず目を引く。
何もない荒野で誰も助けてくれない、でも他人を害することでしか生きられないという環境で、
最初は苦渋の決断だった筈なのにどんどん奈落へ堕ちていく過程が良く描かれています。

そして何といっても中盤での本作のヒロイン賈駆(詠)の主人公交代を思わせる献身ぶりと、
その結果が齎した最終盤曹操戦での無数の無才を束ねて英雄を打ち倒すという
一刀君の哀しい答えがたまりません。

他にも郭嘉と程昱の以下3言の別れに込められた深すぎる思いや、
賈駆や袁紹のどうしてこうなったと思わざるを得ない最後等見どころが沢山あり、
シリアスで重い作品ですが、気にならない方は是非読んでみてほしい一作です。

「そうですか……風、どうか気をつけて」
「ええ、凛ちゃんも……それと、ごめんなさい」
「謝らないで下さい、風。これが私の役目、天命だったのですよ、きっと」

最後に、作者の個人サイトの本作裏話の最後に救われる一言が記載されています。

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