一年戦争の開始より5年前。
ジオンのサカキ財閥令嬢、アヤ・サカキはシャトル事故に遭ったことでニュータイプとして目覚め、刻を見た。
そうしてジオン敗北の未来を知った彼女は、連邦軍が一年戦争で戦線に大量に投入をした簡易モビルポッド、ボールを使った戦力の底上げをギレン・ザビに上奏する。
これは、ifの歴史を辿ったジオンを支えた縁の下の力持ち、ボールの物語である。
全28話6万文字のガンダム長編完結作品。
ジオン敗北の未来を見たニュータイプの主人公がMSを補完するジオン版ボールの開発を推進。
未来知識で変貌を遂げたボールと戦争戦略によってまた新たな一年戦争が描写されます。
スペースデブリによるシャトル事故で生死の狭間を彷徨いニュータイプに覚醒した主人公に、
この後ジオンで十五年後まで生きた自分の記憶が流れ込んだ。
このままでは敗北するジオンを変える為敗戦後にボールを民間に払い下げていた経験から
その構造を把握しているボールを開発するべくギレン総帥に企画書を持ち込んで直談判。
曰くコストがMSの1/4以下で定年後のシルバー人材でも使えて、
生産ラインも現行のスペースポッドのものが使えるのでMSの生産に影響を与えない。
MSの性能を発揮させるためにもボールが必要なのだと熱弁しギレンから許可を勝ち取る。
こうしてチタン合金製外殻と105ミリマシンガンを搭載したボールが完成し、
更に射撃管制装置として搭載した学習型OSのブラッシュアップの為に開発した、
連邦軍と戦う体感シミュレーションゲーム戦場の絆がジオン中で大ブーム。
戦場の絆は他のコロニーでも人気となって連邦への独立感情を高め、
ザビ家での戦争戦略すらも変えた状態で強化版ボールによる一年戦争が開幕していきます。
本作はボールならではの活用法が上手く描写されている作品で、
各種工作作業に始まり戦場でも様々なバリエーションのボールが活躍し、
決して丸い棺桶扱いとはならない格好良いボールが新鮮です。
そしてボール描写の他にもギレン総帥の政治手腕の巧みさが各所で光っていて、
ボールという見せ札を有効活用しきった才覚の偉大さが良く分かる作品となっています。
良い子な主人公との交流でより穏当な方向に変わっていくザビ家の面々も魅力的で、
新しい一年戦争とボールの評価を見せた良く纏まっている作品なので是非一読してみて下さい。
ハーメルンで今も執筆続けられていて投稿作品の中にスカベ2次を見つけてとてもびっくりした。
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