トウカイテイオー育成中に、シンボリルドルフが「やあ」ってシナリオの脈絡に関係なく目標レースに出てきたことで思いついた物語です。
これは怠惰に生きようとしたオリウマ娘が『3億円』を稼ぐためにトゥインクル・シリーズに挑戦したら、相手になる世代が全ウマ娘だった話。
原作ウマ娘全90話55万字長編完結作品。
才能も実力もネームド達には到底足りないと自覚しているモブウマ娘な主人公が、
あらゆる盤外戦術を駆使してでも足掻いた結果読者に新たなウマ娘の景色を見せた大作です。
現代競馬の知識を持ってトレセン学園に入学したウマ娘サンデーライフが主人公。
現役の内に3億円を稼いで引退後の人生を謳歌しようとトゥインクル・シリーズに挑みますが、
メイクデビューではスーパークリークに惨敗しその後もテイエムオペラオーに始まる、
ネームドに負け続けてここは世代無関係のバトルロイヤルな魔境アプリ時空だったことが発覚。
自分はバ場・距離・脚質適性の全てがCのハッピーミークの下位互換に過ぎず、
このままでは3億円を稼ぐどころか高額な入学金と奨学金の返済生活が待っている。
なので努力でも才能でも実力でも何一つネームドには敵わないと自覚している主人公が、
史実競馬知識やコースの特徴を基にネームド達への戦略を練り上げ続け、
更にはレースの興行規則すらも利用してこの世界の優駿に戦いを挑んでいく。
そうして唯の強めのモブウマ娘が「条件不問の王子様」となるまでに至った3年間が始まり、
皇帝シンボリルドルフが発した到底不可能な問いへの彼女らしい回答によって、
中盤以降も読者に更なるウマ娘の魅力が伝わっていきます。
「サンデーライフ。
君なら、もしこの私――シンボリルドルフと戦うことになったとして、どうやって勝利を掴む?」
本作は普通に戦っても負けることが確実なネームド達にどこで戦ってもぶち当たるアプリ時空で
モブウマ娘から見たウマ娘世界がこれ以上なく独特に描写されている作品となっています。
レース前は自身が持つ競馬知識から下準備を積み重ねて対策を講じて、
レース中には賞金目当ての出走経験の多さから来る対応能力を以て勝ち筋を見出していく。
そんな勝てない戦いはしないものの勝てるならどんな形でも勝利を掴み取る執念を持った、
興行規則までも利用し尽くすこの主人公を是非ご覧ください。
56話でモブウマ娘が宝塚記念に出走するために、
まるで選挙戦のような票読みの情報戦が繰り広げていったのは印象的です。
更に本格的なレース描写が白熱したものになっているのも魅力的で、
それぞれのネームド達が都度魅せる輝きにどうやってモブな主人公が対応していくのか。
毎レース毎に勝敗含めた予想できない様々な展開で読者を楽しませていきます。
特に38話の同じ策略家セイウンスカイとの間での大熱戦がお気に入り。
そして最終話もこれまで一つ一つ着実に成長して変わってきた主人公のその過程が、
丁寧に思い出させてくれた本作らしいレースで素晴らしかったです。
そんなモブウマ娘からまた違ったウマ娘世界が展開される大作なので是非一読してみて下さい。
コメント