フィリップ・K・ディックのSF小説「ユービック」をやる夫スレ化した全14話長編完結作品。
謎めいたSF世界を舞台に本当は誰が敵なのか2転3転するミステリーによって人気な原作を、
やる夫スレで表現することによってSFに馴染みのない方にもより分かりやすくなった良作です。
超能力者の出現によって個人の内心から政府の重大機密まで
読心能力者には全て筒抜けとなってしまった2092年の世界。
その超能力者に対抗出来るのが「超能力を打ち消す能力者」の不活性者達で、
やらない夫はその不活性者を雇って市民を守る企業を経営していた。
そこに太陽系最高の読心能力者を始めとした何人もの超能力者達が月にいるという情報が入り
これ以上の被害を防ぐべく最強の11人を揃えて月の産業施設に向かうことに。
そして実はやらない夫たちは騙されていて爆弾テロに巻き込まれますがここまでがプロローグ。
ここからこれが人気SF作家だと思わず感嘆するようなピースが綺麗に嵌まったかと思えば
途端に崩れ落ちていく驚愕の展開が連続して読者を魅了していきます。
本作は会話が出来る自我を残した死体な半生者というぶっ飛んだ発想が特徴的で、
これによって果たして登場人物が生きているのか死んでいるのかすらも全く分からなくなって、
それまでの前提そのものが覆っていく展開に次に何が起こるのか毎回ハラハラさせられる。
そんなSFにミステリーの要素が加えられたエンターテインメント性溢れる作品です。
そしてやる夫スレになっていることでSF初心者にもかなり理解がしやすい作品になっていて、
先ずキャラクターが多いですがやる夫スレだと配役で覚えらえるのでかなり読みやすい。
更に作中登場する不可思議な現象もAAによって何が起こっているのかも分かりやすいために
原作のスリリングで奇妙な展開にも躓くことなく読み進められる作者の技が光っています。
そんな非常に刺激的で人気の高い原作がよりAAによって分かりやすく表現され、
全14話で読みやすく仕上がっている作品なので是非一読してみて下さい。
コメント
出すぎてうざったかったユービック広告が最後の最後で日常に出てきて安心できるとは
コメありです!
緊迫した展開が続く中でも変わらずそこにあったユービックに感謝です