やらないキッチンの荻原数馬さんが送る本編50話完結の笑いあり涙ありのスペースオペラ作品。
どうみても宇宙戦艦な輸送艦の艦長やらない夫が下ネタ満載なクルー達と一緒に、
反政府勢力がたむろする宇宙をユーモアたっぷりに生き抜いた大作です。
西暦2300年の宇宙大航海時代に輸送艦の艦長を務めるやらない夫が主人公。
どんな困難な条件でも輸送をやりとげるとの評判を聞いた依頼人ルイズから、
宇宙海賊が蔓延る開拓惑星まで資材の輸送依頼を受けたことで物語が始まります。
この開拓惑星に着いてみると軍事用のエネルギー資源が産出される超重大な惑星で、
このままでは反政府ゲリラや海賊団が大挙して押し寄せてくることが発覚する。
輸送艦一隻では到底守り切れないこの問題をどう解決へと導いていくか。
そんな輸送屋に降りかかる様々な問題を面白可笑しく解決する序盤から、
そもそも一体何故宇宙戦艦なんて輸送艦が民間人によって運用されているのか。
その経緯の判明後に中盤の衝撃的過ぎる事件の発生によって本作の雰囲気は一転し、
ユーモアはそのままにシリアスさを重厚に押し出した一大艦隊決戦が始まっていきます。
本作は先ず序盤早々のインパクト抜群なコメディ描写が印象的で、
各話で笑える描写を挟みながら世界観が描写されるので気づけば本作に入り込んでました。
書籍化された代表作やらないキッチンにも表れている作者のコメディを先ずお楽しみください。
特に第3話銀河でもっともくだらない戦いでの以下のフレーズがお気に入りです。
『 邪魔だ、さっさと失せろ民間船 』
そんな序盤のコメディ描写で各キャラクター達の魅力を十分に表現した上で、
中終盤のシリアス展開でそのキャラ達が輝きを放る構成となっているので
心に重く来る展開も読者を全く飽きさせず惹きつけられます。
一番印象的なのはやはり中盤のこれまで描かれた舞台が大きく変わった24話と、
傍らで描写される黒沢社長の勘違い成り上がりロードでこれには癒されました。
そんな完成度が高い構成で笑いあり涙ありの大作なので是非一読してみて下さい。
小説版がカクヨムで投稿されています。
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