引退。どんな選手にも等しく競技人生の引き際はやってくる。
目標を達成し、満足してターフを去る者。実力不足で結果を残せない者。スランプから自信をなくした者。あるいはケガに泣かされた者。毎年相当数の選手が現れては、ほんの一握りの実力者を残して消えてゆく。
だが、出走表から名前が消えても存在までが消えることはない。かつてレース場に夢を描き、コースを駆け抜け、ファンを沸かせたあのウマ娘はいまどこで何をしているのか。彼女らの第二の蹄跡を、追った。
全7章30万字で最終章「画家となったサイレンススズカ」を以て完結したウマ娘長編作品。
他に「ナイスネイチャ」「イクノディクタス」「ヒシアケボノ」と、
「マチカネタンホイザ」「メイショウドトウ」「セイウンスカイ」について、
各章毎に彼女達のトレセン引退後の第二の人生が描かれていき、
ウマ娘で中心となるレースでなく、走れなくなった後何をするのかに焦点を当てた良作です。
どのウマ娘にも死闘を繰り広げた現役生活を終わる時はやってくるが、
現役中はレースに勝つ事が至上目的で現役が終わった後を考えているウマ娘はほぼ皆無で。
本作ではそんな状況で彼女たちの引退後は何をしているのか。
そして何を思ってその職についたのか。それをインタビューで明らかにしていきます。
本作は先ず各キャラクター達の解像度が非常に高いのが魅力的で、
このキャラだったら確かにこの職業を選んでいても全くおかしくないと、
違和感が全く出ない深く考え込まれた物語が展開される。
その物語の構成自体も本当に良くできていて、
ウマ娘達のセカンドキャリアの最初は何をすべきかも分からない苦難の連続から、
どんな転機があって落ち着いた今に至るのかを描く読み応えある展開が各章毎に味わえます。
そして何よりもウマ娘達が選んだセカンドキャリア自体に対する濃密な描写が素晴らしい。
章末の参考文献リストで分かるように作者による現代社会の調査が深くなされているので、
正にドキュメンタリー番組のように知らなかった職業の一面が克明に記され本当に勉強になる。
そんなウマ娘キャラクターで読者に入りやすく現代社会の実像に迫っている、
他にない2次創作となっているので是非一読してみて下さい。
2023/7/30追記
ビビる程綺麗に描かれたサイレンススズカのセカンドキャリアを以ての完結に伴い
とてもお勧め⇒かなりお勧めに推し度変更しました。
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