※ハーメルンのリンクですが個人的に本作はarcadiaなのでarcadiaカテゴリ
覇王も認める演技の才で、覇王にもなりきってしまえる少年の、色々おかしな三国志。
54話で更新停止の68万文字原作恋姫長編作品。
並外れた演技の才を持つ主人公が数々の英傑に変身し面白可笑しい日常と戦争を駆け抜ける、
日常コメディと秀逸な戦争描写が組み合わさった大作です。
小柄で女顔が悩みという現代人な主人公南雲拓実は、
何故か自分が製作したチャイナドレスを着て見知らぬ荒野に独り倒れていた。
混乱しつつ見えていた集落に辿りつくと曹孟徳の名を聞きこの世界が三国志だと知る。
その集落に警邏にきた春蘭に余りにも拓実が敬愛する主である華琳に似ていたために、
家で秋蘭と共にこっそり楽しもうと世話係として半ば拉致されてしまって‥
しかしこの主人公は外見が華琳様に偶然似ていたのみならず、
演劇の大会で個人で得られる最高の賞を獲る程に自分の演技に矜持がある主人公だった。
最も華琳と近い秋蘭と春蘭すら誤認してしまうその演技は華琳との謁見の場においても炸裂。
華琳様本人でさえ完全に華琳になりきっていた主人公を見て「そんな……まさか」と狼狽し、
禍根の芽を摘むために首を刎ねられる直前でトランス状態から凡庸な一般人に何とか戻り
ただの演劇の技術であることを知った華琳にその才を見込まれ仕官することに。
そうして華琳自身の名すら名乗ることを許された、
中枢のみが知る華琳様の影武者としての主人公の仕事が始まっていきます。
本作はそんな恋姫無双に並外れた演技力を持つ現代人がいたらを描いた外史で、
正しく桂花と桂花が言い争っているようにしか見えない鏡合わせの掛け合い漫才に始まり、
32話での影武者としての試験の結果どちらが華琳様でしょう?のシーンのような、
神がかった演技力に動揺するキャラクター達の独自の日常描写がとても良く出来ています。
そして恋姫作品らしい戦争描写も見事にこの主人公の影武者という設定を上手く生かしていて、
35話汜水関の戦いでは軍師自らが殿として一千の兵の先頭を駆けて包囲網を完成させ、
影武者としての初仕事も正に華琳様が二人同時にいないと到底出来ない技を見せてくれました。
個人的に好きなシーンは終盤で漢の旗を騙るという現代人ならではの発想を受けて
「どちらが本物かなんて関係ない、目の前のあんたにボクの真名を預ける」と告げた詠が
後でしれっと軍略談義でどちらがどの華琳様なのかを判別した所。
とても彼女の軍師っぽさが溢れていました。
そんな戦争の熱い描写から一転した三姉妹の付き人日常編で更新停止となっていますが、
一人でも恐ろしい華琳様が二人同時に存在するというこの面白さは本作でしか味わえませんので
是非気になった方は一読してみてください。
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