かつて、名球会入り目前で病に倒れた大投手が居た。
その男は最速130キロ程度の球速でありながら、出どころの見にくい投球フォームと多彩な変化球によって、遅い直球を実際の球速表示よりも速く錯覚させていたという。
通算で積み重ねた勝利数は199勝。遅い球しか投げられないにも拘らずプロの打者を相手に勝ち進む彼を、人は「星の大魔王様」と呼んでいた。――これは、そんな大投手の記憶を持つ一人の野球少女のサクセスストーリーである
パワプロ世界ならオリ星野氏のようなタイプの女の子投手が出てきても良いんじゃないか、そんな考えで書いてみました。
全91話60万字のパワプロ原作長編完結作品、
今まで読んできたパワプロ小説の中で最も自分がはまって作品にのめり込んだ作品で、
パワプロらしい爽やかな青春と本格野球描写が両立した傑作です。
リトルリーグで全国制覇した超実力派の投手である泉星菜がヒロインにして主人公。
彼女は性別が女性故に中学に上がった途端に栄光だった今までとは一転して
成長期を迎えたチームメイト達に次々に実力が追い抜かされていくという絶望を味わうも、
左腕を全く見せない投球フォームと多彩な変化球によって199勝を誇る
星園渚というプロ野球選手だった前世の記憶を思い出すことに。
その前世の能力を習得することでチーム一の投手となり嘗ての栄光を取り戻しますが、
所詮「女性選手は高校野球には出場できない」という監督そして世間の常識によって
実力はエースであるのにも関わらず試合には出場できないという憂き目にあってしまい…
そんな彼女が野球とは縁を切るつもりで入った高校で野球の楽しさを思い出していきます。
本作は正に尻上がりにどんどん熱くなっていく作品となっていて、
プレーヤーを諦めて野球を楽しむ野球部員たちを羨望する日々を送っていた序盤から
早川あおいと出会ったことで野球選手としての熱を見事に再燃させた中盤。
そして「覚醒」の章で天才野球少女小山雅率いるときめき青春高校と主人公との死闘と
その死闘が終わった後での満を持したタイトル章の展開が本当にたまりません。
既読の方もこの2章はもう一度読んでみてほしい。
本作は中心となる野球描写が1試合を数話1万文字程度かけて描かれていて、
主人公が一球一球に魂を込めて投じるのに合わせて熱くなれる濃密な試合展開が魅力的です。
最速115km/hしか投げられない中であらゆる技術を駆使して打者を打ち取っていく、
本作ならではの主人公の奮闘とそれを以てしても超えられない相手チームの強大さ。
その魅力溢れるキャラクター達によって盛り上がる試合が素敵でした。
さらに野球描写以外にも甘酸っぱい恋愛も素晴らしく
女性主人公なので鈴姫健太郎という原作キャラクターとの恋愛となりますが、
読者全員に主人公との恋愛を応援せざるを得なくさせる彼の真摯な振る舞いも良かったです。
そんな恋愛に野球にと王道的な青春をこれ以上なく楽しめるので是非一読してみて下さい。
記事紹介ツイート
紹介記事を投稿しました。
— 夜市よい (@yoichi_041) March 23, 2023
「女性選手は公式戦に出場不可」という、
残酷な現実に立ち向かった野球少女による、
爽やかな青春と本格野球描写が両立した大作です。
とある野球少女が夢へと挑戦するパワプロ最高峰2次小説
「外角低め 115km/hのストレート」
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