腕は立つけどコミュニケーションは苦手。だけど、困っている誰かに手を差し伸べるのは当然のこと。
そんな少女が迷宮配信者になったのは、「探索者は映像記録を公開しなければならない」という制度のせいだった。少女は迷宮深層を一人で探索し、時には率先して他の探索者の救助に向かう。
百人前後の視聴者たちに温かく見守られながら、そんな配信を日課としていた彼女のもとに、ある時国内最大の医療法人からオファーが届いた。「救助活動、やってみない?」
喋ればポンコツ、黙れば最強、やりたいことは人助け。
コミュ障な女の子と愉快なリスナーたちが、助けを求める誰かのために迷宮を転がる物語。
92話33万文字連載中の明日書籍版第一巻が発売する現代ファンタジー迷宮作品。
凄腕の迷宮探索者で人を迷うことなく助ける志を持つもののコミュ力が壊滅的な少女が、
迷宮での救助活動を行う姿を探索者に義務付けられた配信で公開していく。
凶悪な魔物との刺激的な戦闘描写と主人公に癒される迷宮配信に加えて、
視聴者の配信コメントでの数々のネタを交えてその配信の様子が面白く描写される良作です。
地球に迷宮が生まれて15年が経ち迷宮探索の透明化の為に探索配信が求められている世界。
そんな世界で迷宮が大好きな主人公は4年も迷宮探索をして生き延びている凄腕なものの、
人と関わるのが苦手過ぎてソロでの探索を続ける百人前後の視聴者を持つニッチな配信者。
そしてその配信内容は挨拶も名乗りもなく深層の魔物を淡々と無言で駆除し続けるもので、
視聴者達は一般的な配信とはかけ離れたその様子を暖かく見守る独特な雰囲気を形成していた。
そんな主人公の転機となったのが高い実力と救助参加率を見込まれたスカウトを受けたことで、
そのスカウト元は大手の探索事務所等ではない国内最大の医療法人団体日本赤療字社。
スカウトを受けて世界で初めてのプロとして迷宮救助を行う探索者となった彼女が、
強大な魔物と命を削り合う戦闘を繰り広げながら華麗な救助を決める格好良い姿と、
戦闘以外では無言で慌ててる可愛い姿を的確な配信コメントと共に見せていきます。
本作は探索者が何故迷宮で配信するのかが分かる自然な設定の導入から良かったのですが、
一番目を引いたのが各話で描写される視聴者達による配信コメントの内容で、
コメントの中に数々のネタを仕込ませていつもクスッとさせてくれる。
主人公を持ち上げるだけではない配信コメントが現代ダンジョン作品として魅力的で、
やる気が全く感じられない配信タイトルをつける主人公と合わせ普通でない配信が楽しめます。
そして主人公が迷宮での救助活動を職業として行っていくのが新鮮で、
それもただ単に主人公が迷宮で魔物を撃退し探索者を救助して終わりというものにはならない
医療法人団体として裏側で活動・支援する人もしっかり描写されているのが本格的で良かった。
最新話付近ではサブキャラクター達が個性を見せてきて迷宮救助の舞台も拡大し、
主人公ちゃんが助けるのみではない飽きない展開を見せてきてくれました。
特に中盤初登場した七瀬と山田の初印象からの株上がりっぷりはびっくりした。
そんな現代ダンジョン配信ものに見慣れてて飽きてる人にも是非一読してほしい良作です。
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