漢王朝を開いた『項羽と劉邦』の劉邦、蜀漢の皇帝となった『三国志』の劉備。
日本でも有名なこの二人に比べて、今ひとつ知名度が低い後漢王朝の祖、光武帝劉秀。このスレは、その光武帝を主人公とした物語です。
ソースは『後漢書』、各種研究文献、通俗二十一史など。塚本光武帝は終わってから読む予定。
基本的に史実に沿った展開ですが、拡大解釈や記述のない部分での創作は含んでいます。
全64話のオリジナル歴史系学ぶスレ長編完結作品。
一度滅びた漢王朝の再興を見事成し遂げるに至った光武帝劉秀の苦難が続いたその過程が、
数多くの文献資料による調査の元でコミカルに面白く描写された名作です。
項羽との激闘に勝利した劉邦により築かれた漢王朝の成立から200年が経ち、
儒教の教えや豪族を始めとした貧富の差の拡大によって漢王朝は崩壊の一途を辿っていた。
そして皇帝を譲位させた王莽により新王朝が樹立したことで漢王朝は滅亡。
その王莽は儒教を重視した非現実的な政策や汚職の蔓延により世は荒廃する一方、
後の光武帝・劉秀は実の兄が新王朝への反乱を企てたことで
負ければ一族皆殺しの為に劉秀もその豪族達の反乱に参加することとなった。
そして反乱軍の討伐に赴いてきた新王朝からの百万の討伐軍を数千で守り切った
古代中国史上に残る防衛戦「昆陽の戦い」で劉秀はその武将としての才覚を見せると、
更にその大勝利後に自らの政権中枢に対し無条件の服従を示し政治家として大器の片鱗を表す。
そんな劉秀がその後王朝を樹立しても身内からの裏切りは続出したりと苦難は続く中で、
見事漢王朝の中興を成し遂げたその過程が描かれていきます。
本作は光武帝劉秀の辿ったその人生のその波乱万丈さが本当に良く分かる作品となっていて、
仲間達がどんどん亡くなる一瞬たりとも気の抜けない戦いが何度でも続いていく。
その最後には支配者は「孤独」でなければ許されないという訓戒を自らに課すに至った
最初は元ニートヘタレとして描かれていた劉秀の成長と共に王の難しさが良く示されています。
そうして分かりやすく光武帝を学べる学術面としての面白さの他にも
数々の下ネタ描写を挟んでいくことで気楽に楽しく読める作品になっているのが特徴的で、
特に「揚之水」から突如見せられた作者オリジナルの詩が何年経ってもインパクト抜群でした。
「夢精」
陽猛覚空 陽 猛りて 覚めるも 空し
白漏不届 白漏 届かず
来賢人哀 賢人 来たるも 哀し
想只宙去 想い ただ 宙に去り行く(対訳)
第十二章 王莽最後
夢の中でペニスが暴れ狂っていたが、目が覚めると空しいものだ。
わが白酒は誰にも届くことなく(夢精で終わった)
賢者タイムの訪れが、余計に悲しみをつのらせる
興奮も、後悔も、ただ夜の闇に吸い込まれていくばかりだ。
そんな笑えるコメディを挿し込みながら過酷な戦争の他にも権力の腐敗や暗闘が描かれた、
読みやすく面白くそして勉強になる名作となっているので是非一読してみて下さい。
AAでなら覚えられるので人物表を毎回分かりやすく纏めてくれた方にも15年経っても感謝です。
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