底辺トレーナーとキングヘイローが出会うようです。
原作ウマ娘120話80万字長編完結作品。
未勝利戦を勝利することがいかに難しいか酸いも甘いも知りつくしたトレーナーと、
一流を証明する為にレースに挑むキングヘイローによる泥臭く熱い3年間が描かれる大作です。
トレーナー歴10年にして重賞の勝利が皆無という底辺トレーナーが主人公。
実績がないために自分のスカウトを受けてくれるウマ娘はいなく、
所定期間内にチームに所属出来なかった能力が低いウマ娘達の担当をするが、
最下位層に近いウマ娘達では活躍は出来ず実績は出せない負のループな日常を送っていた。
そんな中チームに配属されてきたスタッフ研修生に何故このチームへの希望を出したと聞くと
あなたが一流のトレーナーだからという答えが返ってきた。
何故成績不振でウマ娘達を退学させる主人公が一流のトレーナーなのだと断言できるのか。
語られる明確な理由を盗み聞いていたのがトレーナー探しに挫折していたキングヘイローで、
一流のウマ娘にしてみせると主人公が宣言しキングヘイローとの契約が結ばれることに。
そうしてキングヘイローが飛躍的な成長を遂げる第1部ジュニア編が始まりますが、
そこから一転主人公が周囲から最低のトレーナーと侮蔑され底辺トレーナーとなるに至った、
衝撃的な過去編を挟み黄金世代と死闘を繰り広げていくキングの一流への道が幕を開けます。
本作は先ず独特なオリジナル設定の元での主人公の魅力が十二分に分かる描写が良く、
未勝利戦すらも勝たせてやれなかった主人公の苦しみと奮闘ぶりには序盤でも心をうたれます。
「お前は最後の未勝利戦で負けて、泣いているウマ娘を見たことがあるか?」
「俺はそんな担当ウマ娘を何人も何人も経験してきた。あれはな、トレーナーとして本当に最悪な気分になるんだよ。大雨のなか、地面を這って延々と泥水を啜っているようなそんな気分だ」
更に挫折したキングが急激な成長を果たし名実ともに黄金世代の一角となるに至った
トレーニングの過程が非常に具体的で分かりやすいのが本作の確かな魅力の一つです。
最先端の現代機器を活用して判明した課題を克服していくキングヘイローには納得させられて、
しかしそれでも黄金世代のメンバーには中々届かない黄金世代の壁の厚さが良く分かります。
そして何よりも中終盤にかけて語られる過去編が本作の中で非常に魅力的で、
主人公が犯した不祥事が遂に明かされる驚愕の追憶編が終わって畳みかけるように始まった、
あるウマ娘の視点で語られていく2人のすれ違いに悲しくて涙が出てきそうになる追想編。
順調に成長していく本編ともの悲し過ぎるシリアスな過去編の2本立てで展開された後に、
主人公が残したノートの中身が判明して挑む最終章でのキングの物語が非常に楽しみです。
数多くのオリキャラも登場しますがチームの一員となったカレンチャンの娘カレンモエを始め、
みんなキャラクターがしっかり立っていてまた新たなウマ娘の世界が堪能できます。
そんな魅力的なキャラ達と本格レースを楽しめてシリアス描写でウマ娘世界の過酷さを知れる。
底辺から一流まで数多くのウマ娘達の思いが知れる大作なので是非一読してみて下さい。
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