―――阪急今津線。
神戸線へと続き、JR宝塚線と【人】の形でつながる私鉄沿線。
関西の巨大私鉄『阪急』内では、やや知名度が低いその電車は、
人数分の人生を乗せ…どこまでもは続かない線路を走る。
片道わずか15分。 ―――そのとき、物語が動き出す。
有川浩の小説「阪急電車」をやる夫スレ化した全16話長編完結作品。
電車で15分だけ偶然乗り合わせた乗客たちのドラマを一人一人描いていく、
読みやすく良い話の連続にほっこりとさせてくれる良作です。
社会人やらない夫は阪急線に乗っていた所、見覚えのある女性が隣の席に座ったことに気付く。
その女性雪華綺晶は地元の図書館で幾度も本の争奪戦を繰り広げていた因縁の相手で、
どうも隣に座るのがその自分だとは気づかれてない様子。
様子を見ていると彼女はいきなり座席から後ろを向いて電車の窓を大きく振り返っていて、
つられて窺うと川の中洲に”生”という文字を象った石のオブジェが見えた。
「凄いでしょう?」と話しかけられたことから話は盛り上がり、
そして最後に彼女が電車から降りる前に次は図書館で会いましょうと誘われ、
最初から逆ロックオンされていたと気付いたやらない夫の恋が始まっていく。
そしてその駅で降りて行った二人を見ていたのは、呼ばれた結婚式帰りの水銀燈。
恋人だった男を後輩の女性に寝取られたのでせめてその結婚式を台無しにしてやろうと、
人生で一番着飾った新婦よりも尚華やかな自分を見せてこの日を呪いの日にさせることに成功。
無事に結婚式への討ち入りに成功したその帰りの阪急電車で何が起こるのか。
前話のほのぼのさと打って変わった水銀燈の物語が始まっていきます。
本作はそんな阪急電車の一駅毎にローゼンメイデン全員が入れ代わり立ち代わり登場し、
各姉妹それぞれの全く違う物語が相互に影響し合って一つの阪急電車の物語が完成する。
阪急でしか味わえないような関西らしい人情とリアルさもあり、
電車という全く知らない人同士が入れ替わりつつも先へ進んでいくこの題材は、
短編連作形式の本作の特徴とマッチしていて素敵でした。
好きな話は薔薇水晶とやる夫の回で、
第一部では社会人なのにばらしーに支えられて全くもって駄目駄目だったやる夫が
第二部で垣間見せた男前っぷりとのギャップが印象的。
他にも痛快極まる真紅やカナマジプリティな金糸雀等それぞれの姉妹の良さが光る
本当に読了感が良い作品となっているので良い話を読みたい方是非お勧めです。
そして次は同作者による本作品の水銀燈後日談恋愛作品
「ゴゴサンジは秘密の言葉」もそのまま読んでみて下さい。
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