高校一年生の春休み、僕、安藤純はクラスメイトの三浦紗枝がBL本を買うところを目撃してしまう。どうやら彼女はホモが好きなようだ。まあ、だからと言って僕は自分が同性愛者であることを彼女に明かすつもりはない。勘違いしてはいけない。彼女が好きなものはホモであって、僕ではないのだから
同性愛者の少年と腐女子の少女が織りなす奇妙な関係。ふざけたタイトルに反し、同性愛というテーマに真面目に取り組んだ作品になっております。
全37話15万字オリジナル書籍化済み長編完結作品。
クラスメイトの女の子がBL本を買っているところに遭遇してしまったゲイの主人公。
そこから本物のゲイと腐女子の奇妙な関係が始まりますが、
同時にゲイに生きる主人公の苦しい心情が描かれていくドラマ化もされた作品です。
R-15程度の同性愛描写があって真面目な作品なので語録要素は皆無となってます。
年上好きの同性愛者なことを周囲に隠して生きている男子高校生な主人公は、
書店のレジ前でクラスメイトの女の子がBL本を購入する場面を目撃してしまった。
彼女はどうも学校の男子が全員ホモだったらいいのにと妄想する程のガチな腐女子で、
主人公に口止めを頼みますがこの当の本人が正しくホモであることは知らなかった。
こうして自分を偽って生きる主人公と偽らない彼女の関係が始まっていきますが、
どうも彼女は自分に惚れているらしく遂に告白をされてしまった。
しかしここで主人公は他の人と同じ普通の家庭を築ける異性愛者になりたかったことから
自分が同性愛者だと明かさずに彼女と付き合うという外道の選択をする。
こうして誕生した腐女子とゲイのカップルは当然主人公が原因で全く上手くいかず、
求めに求めていた普通の幸せが全く手に入らない主人公の痛切な心情を描きながらも
最後には腐女子の彼女が格好いい姿を見せることで成長していきます。
本作は一般受けするタイトルとあらすじから実にシビアな心情が展開される作品となっていて、
普通とは異なる性的嗜好を持つ自分とどう折り合いをつけるのかという難題に初めて直面する
この年代ならではの葛藤から同性愛者の苦しみが良く分かる作品となっています。
自分がマイノリティだからこそ人をこうだと決めつけて世界を簡単にしたくないのだと、
そのフレーズが思わず記憶に残ってくる前半で苦しむ主人公の心理描写がとても魅力的でした。
そして日常の会話劇も書籍化作家さんらしくインパクトのある発言がひょんと飛んでくる。
15万字でテンポ良いストーリーを進ませながらも印象に残る日常シーンが良かったです。
「ホモが嫌いな女子なんていないって聞いたけど」
「ホモが好きな女子を嫌いな女子は大量にいるの」『ああ。僕はそのセンサーを使って、自分の『好き』をこう分類している』
『XXX(管理人伏字)が勃つ『好き』と、勃たない『好き』だ』
後半は一件落着した終業式からのマジック小野発覚の温度差が特に印象的で、
この小野君が男子高校生らしさも見せながら最後しっかり芯を見せたので後半で一番好きです。
唯の敵キャラではない到底高校一年生とは思えない根回しと釘刺しっぷりでした。
そんな彼を始め終始良い登場人物ばかりだった中で、
主人公の彼氏の中年は最後に綺麗で良い雰囲気は醸し出していたものの
この人だけは未成年に何やってるのとしか思えずNG。
それでも主人公の同性愛者特有の悩みがとても胸に伝わってくるので是非一読してみて下さい。普通に勉強になりました。
コメント
三浦と亮平の人間性が等身大の高校生なのに高潔かつ誠実すぎてビックリする
マジック小野は作中で語られてた摩擦を無くす典型例ですよね。やってることはぶっちゃけ相当酷いが最後の言葉でまぁ許してやってもいいかなってなるなった(何様)。そこからまた前に歩き出せるのも社会という機構に囚われていない子供の強さなんだろうな羨ましい……
個人的に純くんとかファーレンハイトみたいな未成年が成人と性交渉した結果追い詰められる様子読んで凄い不快感感じたんですけど、現状なぁなぁ追認してる癖に自分の嫌なところだけキレ散らかすぐらいならまずはそうなった原因の一端である偏見を取り除いて社会の普通にしてくれよって話でもありますよね。読んでて当事者意識もっと持たなきゃ駄目だなって思いました。害意の有無と害を与えるかどうかはまた別というか
なんにせよ良い作品です
コメありです!
普段紹介している娯楽的に笑えて面白い作品ではなく、
記載頂いたリアリティのある不快さも感じる作品なので良い作品といってもらえてよかったです。大人顔負けの子ども達でしたね。
作中の世界を簡単にしてはいけないという描写の、単純な一面だけで捉えることの危険さも印象的です。