エンダルジア王国は、「魔の森」のスタンピードによって滅びた。
錬金術師のマリエラは、『仮死の魔法陣』のおかげで難を逃れるが、ちょっとしたうっかりから、目覚めたのは200年後の錬金術師が死に絶えた世界だった。
スタンピードで出現した迷宮と、魔の森を管理するために王国跡に作られた迷宮都市には、ポーションは数十年前から保管されている劣化した物しかなく、超供給不足で値段は高騰。
ポーションを作れる都市で唯一の錬金術師になってしまったマリエラが、こっそりポーションを販売したり、迷宮都市での暮らしをのんびり楽しんだりするお話です。
アニメ化確実だろうと思い未紹介だった現在275話128万字の書籍化済み長編完結作品。
自分以外に錬金術師がいなくなった200年後の世界に目覚めた少女が、
身分を隠しのんびり生活しようとするものの世界は唯一の錬金術師を放っておかなくて。
彼女のドタバタな日常に少しシリアスな迷宮攻略を加え、本格的な錬金術が楽しめる大作です。
錬金術師として身を立てて回復ポーションを売り細々と暮らしていた少女マリエラ。
彼女は魔物が大発生するスタンピードに巻き込まれて魔物に襲われる対象から外れる為に
地下室にある仮死の魔法陣を起動させるも目覚めるとそこは200年後の世界だった。
先ずは情報を集めようと赴いた街で錬金術師という存在が今では絶滅していることを知り、
裏切らない味方を欲した彼女は手持ちのポーションを売った資金で死にかけの奴隷を購入。
その奴隷を治療し味方を得て自身の存在を隠しながらポーションの販路を確保すると、
貴重極まるポーションを作成できる錬金術師として目立ってしまうと狙われる為に
唯の薬屋として迷宮都市での暮らしをゆるく楽しむ生活を送っていた。
しかしこの迷宮都市で滅びる前の錬金術師が作成したポーションは既に底を打っていて、
他の都市からポーションを運んでくるにも作られた地域を離れると効果が劣化してしまう。
なのでこのままではポーションがない為に迷宮を攻略出来ず絶対に錬金術師を確保したい
既存勢力に見つかると死ぬまで閉じ込められてポーションを作らされる運命が待っている。
更に難攻不落な迷宮の攻略模様や絶滅した錬金術師達にまつわる謎に触れながら、
街で静かに暮らしたいだけのたった一人の錬金術師が日常を守るべく奮闘していきます。
本作は錬金術の独自設定が濃密に練られているのが特徴的で、
素材集めからポーションの完成に至るまでその製作過程が詳しく描写されています。
錬金術の奥深さが読んでいるだけで伝わってきて本作の世界にのめり込めるので
特にファンタジー世界の錬金術師の日常を楽しみたい方にお勧めです。
そんな日常にスタンピードが何故起きてしまったのかという謎に加えて、
一層一層毎に違った戦局が繰り広げられる迷宮攻略があって飽きがこないのが良かった。
そして主人公のマリエラちゃんもとても平凡可愛く描かれていて、
立とうとした恋愛フラグの尽くが残念エピソードで上書きされるのが期待以上でした。
マリエラちゃんの挿絵目当てに書籍版を購入しましたが加筆も多めで満足感高い。
そんな可愛らしい主人公による錬金術の日常が楽しめて和める作品となり、
その本編を読み終わった方は短編集もこちらから是非一読してみて下さい。
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