第1章の完結後2年半の休止を経て今月から第2章が始まったメガテン現行長編作品。
田舎町を舞台に悪魔召喚プログラムを手にした1人の不良が自分の意地を貫き通すその過程が、
遠野物語を始め数多くの文献資料を基にした全く新しい独自な物語によって紡がれていきます。
時代錯誤な遠野東高の番長として人助けに余念がない主人公キル夫は、
スマホに入っていた悪魔召喚プログラムによってレベル18もの悪魔を呼び出してしまう。
当然格上過ぎる相手は従わせられずその悪魔に襲われた所を何とか助け出されるものの、
自分の不始末によって人々が襲われるようになったそのケジメをつける為に
レベル2の身でレベル18の悪魔に立ち向かう新米サマナーとしての開幕戦が始まり
この序盤で主人公キル夫の一本芯の通った喧嘩道が読者に披露される。
そこから謎の黒幕に力を授けられた遠野各地の悪魔が暴走する様々な異変に巻き込まれて、
第1章の遠野編から第2章の岩手編・更には東北全体を舞台にした戦いが始まっていきます。
本作はメガテン作品お馴染みのピクシーやジャックフロスト等西洋系の悪魔中心ではなく、
日本の遠野物語を中心とした民間伝承の妖怪が登場する新鮮な作品となっていて、
知らない知識も解説陣が繰り出す数々の毒舌と暴言によって楽しく学べることで
思わず遠野市に観光しに行きたくなる学ぶ系スレの魅力までもが備わっているのが特徴的。
そして本編のストーリーも何処までも不良なキル夫と何処までも捻くれている間桐慎二による、
好対照なダブル主人公体制で過去の背景を深堀りしながら展開されていくので
キャラクター達の魅力も十分に伝わってくる作品となっています。
描写の面では話の緩急が巧みに構成されているのが作者の高い技量が感じられて印象的で、
シリアスで重要な場面にも挟まれるコメディが全く邪魔にならずに飽きずに読み進められる。
そんな読みやすい物語から東北の歴史を自然に学べる作品となっているので、
これから始まる第2章に追いつくのは今がお勧めなので是非一読してみて下さい。
コメント
マジすか東北メガテン再開!?
だいぶ前に読んでてエタったかと思っていましたが、再開できたんですね。
民俗学を齧っている身としては、地方の伝承が関わってくるものがとても気になります。
コメありです!
作者さんのTwitterの更新もなくなり復活は絶望的かなと内心思っていたので嬉しいこの頃です。
やる夫スレも数多く読んで来ましたが民俗学は本作ぐらいしか記憶になく希少ですよね。