オリジナル全58話歴史系長編完結作品。
過酷を極めたソ連視点の独ソ戦をシリアスにAAで分かりやすく解説しながら、
スターリングラードの白薔薇と呼ばれた女性エースパイロットの活躍を描いた力作です。
当時のソ連の国内情勢が数多くの資料を基にして丁寧に描写されています。
ロシア内戦下の1921年に誕生した主人公リディア・リトヴァクは、
年齢制限で拒否された半国営の飛行クラブに直談判して参加する程大空に強い憧れを持つ少女。
しかしその直談判を庇い悪目立ちした父親は大粛清により人民の敵として処刑され、
空を飛ぶ夢を絶たれた彼女は地質学研究員として学者生活を送っていた。
そんな折にソ連女性飛行士による長距離飛行世界記録を樹立した偉業が飛び込んできたことで
空への憧れを再燃させた彼女はこれ以上家族に迷惑を掛けない為に家を出て航空学校へ入学。
そして1941年に無事に卒業しモスクワで飛行クラブの教官として勤務していた最中に
ドイツ軍による対ソ連領奇襲侵攻作戦・バルバロッサ作戦が開始される。
主人公は首都モスクワでの攻防戦に巻き込まれて家族を守る為に女子飛行連隊に志願し、
猛訓練の後にスターリングラード防衛の任務に就くことになって
男性パイロットでさえ勝てない怪物級パイロットが集うドイツ空軍に対し
果たして促成訓練を受けた民間人の素人達が適うのか。死闘が繰り広げられていきます。
本作は地獄のような独ソ戦が克明に描写されている作品となっていて、
独ソ戦の戦争経過はバルバロッサ作戦からエピローグでの戦後に至るまで解説されて
数多くの女性の回想録を元に戦時下の市民の絶望的な生活が描き出されています。
そして主人公リディアを追うことによって女性パイロット達が過酷な環境の元で
彼女達が何を思いながらドイツの侵略に立ち向かったのが良く伝わってくる。
女性飛行連隊の面々が和気あいあいとした姿を見せた訓練校時代から描かれて
戦場で一人ひとりと亡くなっていく様に悲哀さを感じさせてやみません。
本作を読まなくては女性飛行連隊があったこと自体全く知らなかった。
そんな独ソ戦をソ連視点で描くため悲惨なシーンも多く気楽に読める作品ではありませんが、
足掛け3年を掛けて丁寧に製作された大作となっているので是非一読してみて下さい。
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