感想を書くのは苦手です。
どうあがいてもありきたりな言葉しか思い浮かばずGoodもBadもつかない感想ばかりを書き、
既に自分以上の言語化がなされている感想を見ればGoodを押し自分の感想を書くことを諦め、
感想を書こうとすれば1時間考えた末にたった4行を絞り出すような読者生活を送ってきました。
その苦手意識はこのサイト500記事強で累計50万字程を書いても全く変わりません。
しかし何故かこのサイトは需要があり住む次元が違うと感じる作者さんからも見て貰えている。
このギャップは一体どこから生まれたのか。自分の感想を書くのに何が足りていなかったのか。
それを理解する切欠が出来た本で正に推し活の教科書を読めたような読了感です。
本書に於いて感想の言語化に本当に重要なのは語彙力ではなく細分化とされています。
つまり「推しが最高でした」という感想に足りないものは
最高というありふれたフレーズを尊過ぎて死ぬ等に変更するなどといった語彙力ではなく
「推しの死中で見せた壮絶な覚悟に心が揺さぶられて最高でした」等の細分化で、
そこから更に感情を深掘りすることで初めて自分だけのオリジナリティ溢れた表現が生まれる。
この言われてみれば簡単な例ですがそれだけに腑に落ちてきて、
語彙力・発想の貧困さによるものだと考えてきた感想への苦手意識の固定観念が変わりました。
見るべきは単語検索して出てくる類語辞典ではなく自分の中にある具体例だった。
そしてそんな心構えを抽象的に語る本かと思いながら読み進めていると、
後半では前半での考え方を基にどのように感想を形にするか具体的な実践方法が展開されます。
その中の数ある技術論の一つ「メモを残す」によって冒頭記載の、
ギャップに感じていた紹介記事と感想の違いが分かってきました。
「メモを残す」これも言葉にすると簡単ですが感想を書く時には全くやっておりません。
あえて挙げるとするとここすき機能ぐらいでしょうか。
しかしそのここすきすらもそれを見ながら感想を書いたことはありません。
それ故に感想を書くのに最も重要な細分化した材料が頭の中だけで散逸し深掘り出来なかった。
メモを残し何故そのシーンが印象に残ったのかをより深く考えることが出来て初めて、
ありきたりではない自分の言葉が生まれるのだと理解しました。
紹介記事は読み返しながらしっかり印象に残った所のメモをとっていたのでその違いですね。
必要に迫られ始めましたがWeb小説のメモを取りつつ読む読者は確かにそれ程いないでしょう。
そして肝心のどんなメモを残してどのように活用していくのかも本書に記載されています。
この感想を書くという推し活に必要な「細分化」と「メモを残す」。
そりゃあそうだろと本買わなくてもそんなもん分かるわと自分なら思います。
しかしそれがどんなに重要なのかが理論立てて語られ例示も為になって良く分かる。
自分に足りなかったものは語彙力という才能ではなかったのだと腑に落ちる読了感で、
本の表紙だけ読んで「愛が大事です!!」みたいな主観に溢れたものと覚悟してましたが
推し語りをする上での技術論が沢山あって文章術のバイブルになる素晴らしい本でした。
メモを残してまで感想を書くつもりはない方もいらっしゃると思いますが、
感想を書くのに詰まった経験は誰しもある筈でそれは作品への愛が高まる程発生してきます。
そのメモを書いてまでも推しを語りたいと思った時には是非本書を一読してみて下さい。
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