全5話のオリジナルファンタジー中編完結作品。
唯の村人だった筈が王様から勇者に任命されてそのまま放り出されたやる夫が、
魔法なんて存在しない何処までも現実的な世界で腹黒公認会計士初音ミクと共に魔王軍討伐へ。
公認会計士が相棒となる他に類を見ない魔王討伐から素晴らしい勇者の輝きを見せた良作です。
勇者の家系だからと資金不足の中ナイフ一本で魔王討伐に放り出されたやる夫は、
街の付近だからと弱いなんてことは全くない終盤のモンスター相手に対峙して早速全治一か月。
そして通院するお金も生活費すらもない為に王様に資金援助を申し出ると、
資金援助の代わりに魔王を倒すまで一切の税が課されないという営業特権を与えられる。
やる夫はこの特権を最大限に生かす為に起業し公認会計士初音ミクを経理の為に雇いますが、
一見真面目に思えた彼女は法の中で人を騙しまくる腹黒さんで。
彼女は設立した人材派遣会社で大量雇用した未経験者を魔王軍にぶつけて略奪し、
生き残った社員に最低限の給料を払い税金免除の浮いた資金で人員拡大するスキームを構築。
後は寝てても金が舞い込んでくるシステムが出来上がった所で、
最終話で遂に主人公やる夫が勇者たるその姿を初音ミクと読者に魅せていきます。
本作は後半に進むにつれてどんどん面白くなってくる作品で、
序盤のファンタジーのかけらもない世界が兎に角シビアだったシュールコメディから、
シュールさが抜けた過酷な現実を前にしたやる夫の覚悟を決めた生き様が素晴らしかった。
そして腹黒いミクさんも正反対な聖人やる夫との掛け合いを楽しんでいると、
人を騙して悦に浸るだけではない背景が終盤で明らかになって魅力的なキャラでした。
最初の資金難から魔王を倒せば全て解決する訳ではない最後までとことん現実的に描き出した、
全5話で纏まっていて読みやすい他にない勇者×魔王ものなので是非一読してみて下さい。
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