一つだけ言わせてくれ。
2年目5月 ヤン・ウェンリー(ヤン・フォン・イゼルローン)より
君は矛盾とか腐敗を許せない、正義の人だ。
そして大変な軍事的才能がある。
きっと帝国を大きく作り変えるだろう。
ただ、正義で行う戦争は長く続くだろう。覚悟してくれ。
私は、正義と法で秩序だった戦争よりも
矛盾と腐敗と混乱に満ちた平和を求めたかったんだ。
だから、キミとは目指す道が違ったんだと思う。
がんばってね。
中世ファンタジー世界を舞台としたオリジナル全120話長編安価完結作品。
絶賛反乱発生中の失敗国家で傭兵隊を率いることになったキョン子が、
汚職と派閥政治に悪戦苦闘しながら皇帝の信任を得て一国の元帥にまで成り上がる。
読者の安価によって資金収支を計算しながら部隊編成に始まる傭兵団の運営を行い、
持ち込まれた依頼を選んで達成の為に策を練ってこのキョン子をサポートしていきます。
5年後に竜に連れ去られる死の宣告を受けてやる気をなくし引き籠っていたキョン子が主人公。
父親のソーニャ伯爵が反乱軍との戦いで流れ弾に当たって戦死するお告げが出て、
そのお告げの回避とどうせ竜で死ぬからと反乱軍を討伐する傭兵隊を率いることにするも
時代はパイク兵とマスケットによるテルシオ編成の時代なので、
ランスチャージに誇りを持つ父を筆頭とする騎士達は完全に時代遅れの無駄飯食らいで。
騎士達は使えず傭兵の集め方を知ってる傭兵を呼ぶ方法も分からないところから
何とか基幹要員を集めて傭兵隊キルミー守護光輝兵団が発足する。
そうして死ぬ前にこれまで育ててくれた家族達に報いる為に傭兵隊の活動を始めますが、
戦争を30年もやっている国の財政は火の車なので給料の遅延未払い踏み倒しは普通で、
更には皇帝と宰相と大貴族達による派閥政治が繰り広げられて味方同士で争っている始末。
そんな失敗国家の派閥政治に縛られる中で傭兵隊に舞い込んでくる依頼を着実に達成しながら
手紙と贈り物で地道に有力者とのコネを作って武力を拡大し成り上がっていきます。
本作はそんな傭兵隊を何とか運営して成り上がるスレとなっていて、
この傭兵隊の運営システムがシビアになっているのが魅力です。
先ず得た資金を上手く活用し安価で理想の部隊を編成していきますが、
強い騎兵や銃兵は当然コストが高く、古参兵を集めるのも高い給料が必要になる。
そして依頼達成を積み重ねることによって資金を獲得して部隊を拡張しても
国が赤字財政で契約金の遅配不払いが発生し増やした部隊の維持費が支払えなくなる。
果たして略奪経済の道に走らざるを得なくなってしまうのか。読者の安価の力量が問われます。
組み込んだ傭兵隊も主人公のことを舐めているので不服従を隠そうとしなかったりと、
課題ばかりの中一つ一つクリアして部隊を強くしていく達成感がある作品となっています。
傭兵隊が成長した中盤以降は皇帝にも認められて本格的に政治に関わることになり、
大貴族と宰相派で相争う中で統制するには実力が足りない皇帝をサポートするルートに入り、
強大な武力を持った政治的無能ムーブによって誰からも危険視されないルートが見もの。
オッス!オラ政治的無能!!反乱軍はバシバシ殴り倒すけど、あとは良くわかんねぇや!!宰相さんも、三貴族さんも、皇帝も何でも言ってきてくれ!全部やるぜ!!
親友アミティエからの主人公の評判
誰にも良い顔をするにはこれしかない道ですが後半は敵となってしまう嘗ての味方も現れて、
その中で時代遅れのランスチャージを見事に炸裂させたベルリン郊外の戦いの安価が良かった。
そんな独自安価システムと失敗国家のシビアさが味わえる作品なので是非一読してみて下さい。
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