2か月前の50%オフ七沢またりフェアで全巻揃えていて、
一気に読んで世界観に浸る良い機会だったのでこの1週間で最新刊まで完読しました。
web版既読者勢で特に死神を食べた少女は10年強で5周ぐらいはしているのですが、
一気読み宣言した訳ではないので途中で中止はいつでも出来た中で
それぞれの作品の繋がりが強化されていて既刊10冊を一週間で読み切った程に楽しめました。
その1週間の記憶が新鮮な内に感想記事を残しておきます。
少女シリーズつながり
勇者、或いは化物と呼ばれた少女、死神を食べた少女、火輪を抱いた少女
(及びWeb版の極星から零れた少女とロゼッタは引き篭もりたい)
は少女シリーズとして同一世界観で時間軸は勇者⇒死神⇒火輪の順番。
人間の悪意を貯め込み続けていた迷宮を1作目主人公の勇者が封鎖に成功することで、
貯め込まれていた悪意が大陸中に拡散し内乱を始めとした大戦が勃発する。
2作目主人公シェラはその内乱の影響で自分の食料を奪った反乱軍を殺すべく軍隊に志願。
そして勇者に立ち塞がった敵ラス・ヌベスとビーンズ2人の研究を引き継いでいた
仲間の魔術師エーデル・ワイスによって生き返ったカタリナ・ヌベスが副官となり、
死神として数々のやりたいことをやり遂げた後に異端審問官に転身する。
父親は勇者に巨悪として殺され逃げ延びてきた教徒達はシェラに異端として壊滅させられ
敵ながら同情する程に散々な目に遭って落ち延びてきたイルヴァンが3作目に登場し
3作目主人公ノエルの仲間となってノエル躍進の鍵になっていく。
キャラクターとして一番好きなのは純真だった過去からやさぐれきっている勇者で、
死神シェラが一番印象に残って怖可愛さを感じる中で一番友人になりたいのがノエル。
ミツバとは同じ大陸の周辺にいたくはない。
以下は読書メーターで書いていた既刊最初から最後までの単巻毎の感想ですが、
全体としてはやはり死神を食べた少女とみつばものがたり2巻の超展開が好き。
勇者、或いは化け物と呼ばれた少女
上巻
余りにも強すぎる為に人間に見捨てられてやさぐれきった自称勇者が迷宮に挑むファンタジー。
巧みな剣技と強大な魔術に人を完全蘇生させる治癒術までもを兼ね備え
自分を化け物と自認してしまうに至る純粋で勇者然としていた過去話が実に悲しい。
人間を救うことを目的とせず魔物を殲滅するだけの使命だけで動く勇者がむなしく、
果たして救われてくれるのかそもそも何故この地に降りてきたのか下巻の展開に期待です。
下巻
職業認定試験にも合格し一人前の冒険者PTとなった主人公達が迷宮と勇者の闇に挑んだ完結巻。
勇気ある愚か者にしかできない綺麗なお話を見せてくれました。
人間には裏切られて逆に絶対悪だった魔物と共に平和な日常を過ごし、
心の拠り所だった勇者としての軸が揺るがされ続けた中でも貫き通した信念の果てが良かった。
あまりにも豹変していた嘗ての勇者PTは蘇生術に失敗した影響で
魂が歪みおかしくなってしまったと上巻の蘇生回想とカタリナを見て解釈。
続巻死神を食べた少女との数々の繋がりがリンクしていくのが面白かった。
死神を食べた少女
上巻
あまりの空腹から死神を食べて絶大な力を得た少女が内乱で孤軍奮闘するファンタジー戦記。
前線で武勲を立て騎兵隊長となり成り上がっていく中で、
有能な敵に対しこちらは堕落し圧倒的戦力にも関わらず潔い程に作戦次元で負けていく。
この無能が敵であれば興ざめだが味方なので笑えない…所を通り越して
いっそ笑えてくるネタが仕込まれてます。
元帥のシャーロフからは決してアルシア川を越えるなと厳命されていた。が、そんなことは知ったところではない。
下巻
絶体絶命の窮地に追い込まれた中で食べるため、
反乱軍を一人残らず殺す為、そして3つ目の戦う理由が明らかになった完結巻。
敵味方の知略と策略が飛び交う戦場描写に加えて一大決戦もあり盛り上がりました。
「歴史は勝者が作るがそれでは何も変わらない」老書記官の言葉が良かった。
都合の良い歴史を作れても都合の悪い事実と向き合って反省しなくては同じことを繰り返す。
3つ目の戦う理由は諸悪の根源なディーナーを殺すことだと思いましたが、
至高の甘味と語る死神をもう一回食べることだったんだろうな。カタリナの最後もびっくり。
火輪を抱いた少女
1巻
陰惨な研究の犠牲になった仲間達との約束を胸に幸せを求める少女によるファンタジー戦記。
幸せが何かも分からないままに幸せになる為の多くの手段を試す為に成り上がる。
前作と比べて味方が無能でなく兵も装備も優越し士気崩壊での内通者も開幕から続出しない。
勝てるんだ…!思っていたら今度の敵はまるで金髪の孺子に赤毛の親友のご様子で、
魅力ある敵とどんな手に汗握る戦況となるのか楽しみです。
従う他なかった凄惨な実験で自分一人以外は全て犠牲になったと思っている両者共に前を向いているのが偉すぎる。
2巻
遂に戦いの火蓋が切って落とされ侵攻が始まった第二巻。
読者からしても有能でそうくるかと思わせてくれる敵に対して、
中盤の王道でも盛り上がる仕掛けから趣き深い終盤と
中弛みという言葉から正反対な内容の濃い展開が楽しめました。
主人公のような戦場で無双する悪鬼に対しては政治的に無力化させるのは実に正しく、
戦場で1回、政治で2回退けた手腕は敵ながら見事。
そして人民の為に死を覚悟して自らの前に立った親友シンシアとの
両者譲れないぶつかり合いは正しく名シーンでした。
都合の良い勝利を確信させてから前提をひっくり返すことで大敗に追い込む、
その理にかなった戦術も読者視点では予期しなかった冷や水を浴びせられたと
映りかねないですがそうならないように事前に読者に勘付かせるフラグの立て方が巧い。
3巻
完結読了後直ぐに主人公が生涯追い求めた幸せとは何だったのかを考えていた。
手がかりとして思ったのは大陸を統べる皇帝になっても
そこで満足しなかった結果戦乱が巻き起こり多くの人が不幸になる歴史と、
どんなに試しても開けられない宝箱にノエルは最後まで帝国は仇役として残し続けた事実。
そこから考えるに幸福とは仲間と一緒に(挑み続けても達成することのない)希望を持ち続けることなのではないか。
ないものだと思っていた後書きを目にした瞬間びっくりしましたが、
それ以上に印象的だったのはやはり火輪の計の壮大な大仕掛けでした。
みつばものがたり
1巻
生まれて直ぐに死んだ筈が魔術儀式で復活した主人公が平和な日々を過ごしたいのに
無自覚に周囲を呪い殺し不穏な空気が漂い続けるダークファンタジー開幕巻。
暇つぶしに士官学校に勉強しにきた主人公視点ではただのんびりと日常を過ごしているその裏で
主人公に悪意を向けた人間がバタバタと呪いで死んでいくギャップが凄まじく、
自らの力を自覚していないので不可抗力で無実の罪だと確信しているすれ違いが面白い。
味方に呪いを振りまく危険すぎる不発弾な主人公は戦場に放り込んで
死んでもらうことを祈る周囲の選択が実に正しい。
2巻
「率直に申し上げますと、その砲兵准尉を今回の戦いで戦死させていただきたいのです。」
不穏な空気が漂う前巻を終えて一気に展開が爆発した第2巻。
士官学校の教え通りに都合良く動いて戦死していく
戦列歩兵達の悲哀を味わっていたら中盤以降まさかの展開が立て続いてくれました。
不発弾は最前線においやって敵諸共起爆させるに限るとばかり思っていましたが、
悪意に対し呪いで返す主人公の特性をこの上なく発揮させるこんな天職があったとは。
国も神も信じられず震えるばかりな人達がこうなったのも頷けます。
独特なホラー政治戦記ラノベだ。
3巻
絶対的な権力を持つ独裁者は猜疑心に悩まされるものですが
この主人公の場合は直接悪意を向けたが最後死んでいくので悩まされる心配もなく、
周囲からしても殺しても死なないので返す刀で呪い殺される未来しか見えない。
なんて嫌な天秤の上で成り立っている国なんだとしんみりするので潜在的反体制派も許したくなっちゃいますね。
主人公最強ものといえば最強ものなんですが
安心して読めるとは真逆のスリル溢れる展開でひたすら怖いもの見たさで読み進めている。
行きつく果てが気になる怖すぎるこの主人公に対してどう対抗するのか楽しみ。
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無事に一週間で七沢またりシリーズ既刊全書籍一気読み完遂したのでネタバレ有り感想記事https://t.co/aMuFh8OlZ2 https://t.co/hznzi7Xh1A pic.twitter.com/XIlEoI21pX
— 夜市よい (@yoichi_041) October 26, 2025

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