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狂気に抗えない時代に於いて悪名を背負い世界を騙しきった男の魅せられる生涯「ナチスドイツに転生しちゃった件」

アウシュヴィッツ訪問記(@hideto328)よりアウシュヴィッツhttps://mitsuyahideto.com/auschwitz-birkenau2/

貴方はドイツに転生しました。この作品はすべてフィクションであり、どこかの思想や組織や勢力を支持したり賛同したりするものではなく、ただ歴史の狭間に落ちた人が、どう足掻いたかを書いたものです。

全15話4万5千文字のオリジナル中編完結作品。
現代日本からナチスドイツに転生した男が避けれない虐殺を前に名誉を捨ててまで抵抗する。
その主人公が成し遂げた業績が真摯に描き出され感動が止まらない読了感が味わえる傑作です。

よりにもよって地球上で最悪な時期の最悪な場所の最悪の国に産まれ落ちたと独白する主人公は
現代日本から第二次大戦前のドイツに転生してしまって特別な能力も特にない一般転生者。
いくら現在は資産家の両親の元で裕福な暮らしを営めているとはいっても、
一人だけではどうにもならない敗戦と大量虐殺の歴史という時代の流れが待ち受けていて。

そして何の罪もない人々が特定民族だからと虐殺される到底納得できない行為を防ぐべく、
そのまま虐殺するよりも国の為の強制労働に従事させた方が効率的と豪語した上で
ナチス親衛隊将校として幹部には媚びを売って賄賂を贈り権限を広げていく。

しかしその裏では全ての財を投じて作り上げた施設群に員数外の子どもを匿っていて、
それでも強制労働させざるを得なかった自身の工場では救いたかった人びとが亡くなっていく。

そのギャップに苦悩を深める主人公と共犯者達の世界を敵とした孤独な戦いが描かれます。

本作はいくら転生者として未来を知っていても一つの時代自体は到底変えられない、
その事実は示しつつも出来る限りを全てやり尽くした主人公に魅せられる作品となっています。
周りは全員時代の狂気に包まれている中で一人心が擦り減るばかりの日々を送り、
遂に国を騙しきって目的を果たして尚も世間一般では悪逆非道の親衛隊の一人に過ぎなくて。
権力を獲得する為に時代の狂気に染まった様子で模範将校然としているナチス内での描写と、
保護している地下では自身の行為に苦悩し報われない二面性が本当に良く描写されています。

更にそんな主人公が戦後に遺したあの遺書が明らかになってからの展開が特に素晴らしく、
それまでの悔いに苛まれ続けた主人公を見て感じ入った分だけ圧倒される描写が待っていた。

別作者のなにわの総統一代記で印象的だったあのシーンが思わず浮かんでくる、
作中序盤から手記を綴っていた老研究者の正体が暗喩されるのと合わせて唸る構成でした。

そしてこの詰め込まれた内容が全5万文字未満でまとめきられているのが凄まじく、
深掘りしようと思えば何処までも描写出来るような内容がピンポイントに絞られていて
読了後もその世界を想像したくなる傑作となっているので是非一読してみて下さい。

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